FABTECH2025視察を通じて考える 人とAIが共創する製造の未来

今回のFABTECH2025(米国・シカゴ)視察は、最新技術の動向を把握するだけでなく、「AIの在り方とその活用」を、自分自身の体験を通じてAIを理解することも目標にしました。今回の出張で、AIがどのように人と共存し、価値を生み出しているのかを肌で感じることができました。

 

アメリカ製造業のAI活用 現場からのリアルな声

パネルディスカッション:Navigating the Future: 2025 State of the Industry

アメリカの製造業の経営者3名と業界誌の編集長の4名のパネルディスカッションに参加しました。市況は、製造業の国内回帰の背景と、原子力などのエネルギーやAIで牽引されるデータセンター、防衛関連の業界では中長期的に受注が見込めているようです。
一方でアメリカでも人手不足の重要課題で人材に関する話題も多かったです。

パネリストからは以下のような自社のAIの活用事例の紹介がありました。

協働ロボット × AI × ビジョンシステム
物体認識や環境適応が可能となり、ピッキングや溶接などの作業を自律的に実行します。

原子力向けAI溶接ロボット導入
厳格な品質要求に応えるため、クラウドベースで開発されたAI搭載の溶接ロボットを導入。核関連用途として初めて承認されたロボットで、溶接・加工・仕上げなど多様な工程に展開されています。

工程管理とスケジューリング
AIによる生産スケジュールの最適化により、リードタイム短縮とリソースの有効活用を実現。最終判断は人間が行うという姿勢が貫かれています。

品質管理とデータ整合性の支援
手書きデータの読み取りや整合性チェックをAIが自動化。検査や出荷前確認の精度を高める仕組みが構築されています。

図面検索  
過去の製作図面の類似検索をAIで行っています。

海外出張におけるAIツール活用

今回の視察では、AIを「見る・聞く」だけでなく、「使う」ことにも重点を置きました。特に以下のツールは、筆者自身が現地で活用し、AIの実用性と可能性を実感するきっかけとなりました。

Microsoft Copilot (Microsoft 365)
展示会場でのメモ整理や議事録作成に活用。英語での会話内容を即座に要約し、必要なポイントを抽出。また、出張のスケジュールや展示会場の視察ルートの作成を行ってくれます。名前のとおり、優れた副操縦士です。

DeepL  翻訳
出展社への質疑応答や技術資料の翻訳に使用。高い精度の翻訳技術があります。翻訳したものは文字で表示されるので、確認しながらの会話ができます。会話は保存できるので、メモ代わりになります。

Noted  音声メモ+AI要約
会場内での音声記録をAIが自動で文字おこし、翻訳、要約まで対応可能です。筆者は、レポート作成をCopilotに集約したかったので、英語の文字おこしまでNotedで行い、このデータをCopilotで翻訳、要約しました。

これから海外の展示会視察に行かれる方やロボットやAIの情報を収集されたい方に、ビジネスSNS「LinkedIn」もお勧めします。

気づき AIとの向き合い方 

FABTECH2025は、AIのあり方を考えるには絶好の場所でした。次の3つの視点を意識するようになりました。

1. 暗黙知を形式知に
大量のデータから迅速に収集し分析できることから暗黙知を形式知に変換する基盤となり人間の支援してくれます。自律溶接ロボットのNovarc Technologies www.novarctech.com )のシステムは、その可能性に気づかせてくれました。今まで原因がわからなかったものや職人技と言われるものをAIが解明し技術支援をしてくれる時代に入ったと感じました。

2. 目的と手段を明確に
AIは単なる効率化の手段ではなく、共に価値を創造する存在であることを改めて認識しました。AIがなければ語学力も乏しい筆者は限られた情報しか得ることができなかったはずです。意義がある仕事をするために、AIやロボットを活用していくことはこれからの必要条件と理解しました。また個人的な戒めとして「自動化=AI、ロボット」が目的化としていることがあったので注意していきたいです。

3. 責任
これからはより高度な技術が開放されるようになるので、責任をもってAIを活用しなければならないと思いました。正しく使えば業務を加速させ、創造性を広げるツールになりますが、使い方を誤れば、意図しない結果やリスクを招くおそれがあります。人間とAIが共創する未来に向けて、私たちは技術と倫理の両輪で歩みを進めていく必要があります。

これからAIが加速度的に進化していくなかでも、人が最終判断や価値づけを行う「人の介在(Human-in-the-loop)」の視点は欠かせません。言い換えれば、人間が「目的と責任」を意識することだと考えます。AIとの共創は、新しい仕事や価値を生み出すきっかけになり、意味ある仕事を作り出す時代に突入しました。

 

今回のブログでFABTECH2025のレポートは最後になります。ここまでご覧いただきありがとうございました。これからも微力ながら情報発信に努めて参りますので、引き続きよろしくお願いします。

 

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Co TIG Welders カタログダウンロード