2024年11月26月に開催されたユニバーサルロボット社主催ウェビナーでは、「TIG溶接での協働ロボット導入事例と成功の鍵」というテーマで、弊社代表の浅野が講演を行いました。本記事では、その内容をダイジェスト形式でご紹介します。
協働ロボット導入の背景と開発経緯
講演の冒頭では、弊社の会社概要と開発・販売しているTIG溶接ロボットシステム「CTW(Co TIG Welders)」の仕様について紹介しました。
弊社は、板厚1〜3mmの精密板金加工を行う顧客に向けて、機械設備や金型、ネジなどの資材を提供している企業です。神奈川県横浜市に本社を構え、全国に営業展開を行っています。社員数は20名と少数精鋭ながらも、精密板金加工業のお客様に特化した会社です。
TIG溶接におけるロボット化は従来、量産用途の産業用ロボットが中心でした。しかし、小ロット・多品種を扱う精密板金の現場では、ロボットの設置スペースや操作性、ティーチングの複雑さ、専用治具の必要性など、さまざまな導入障壁が存在していました。これらの課題を解決するべく、弊社はユニバーサルロボット社製の協働ロボット(以下、URロボット)をベースに、「CTW」の開発に着手しました。協働ロボットがあたかも同僚にように人間と一緒に働く未来の溶接現場をイメージして、「Co TIG Welders」と名付けました。
製品の特徴と使いやすさ
「CTW」は、ロボット操作に不慣れな作業者でも簡単に使えることを前提に開発されています。URロボットの高精度な軌跡制御と、ツールセンターポイント(TCP)の設定の容易さを活かし、精度の高い溶接を実現します。
ダイレクトティーチング方式を採用しており、タッチパネルから対話形式でプログラミングが可能。プログラムの作成は30分〜1時間程度のトレーニングで習得できるようになっており、未経験者でもすぐに実践的な運用が可能です。また、安全面にも配慮しており、セーフティーマット上に人が載っている場合はアークが発生しない設計になっているほか、URロボットが備える標準の安全機能やシグナルライトなども標準装備されています。
導入後も弊社が窓口となり、操作方法の指導からトラブル対応、アフターサポートまでを一貫して提供する体制が整えられています。
実際の導入事例
既にCTWを導入頂いている3社様をご紹介させていただきました
- 長野県・タカノ様
大型ワークに対応するため、アーム長1300mmのUR10eを2台導入 - 岩手県・北上製作所様
UR5eを2台(TIG+レーザー溶接兼用)、UR10eを1台(サンディング用途)導入 - 大分県・長尾製作所様
TIG溶接用にUR5eを3台導入
それぞれの現場において、作業者はロボットと協業することで、高い効率と品質を実現されています。なお、3社様の導入事例の動画はUR社または弊社HPにおいてご視聴頂くことが可能です。
導入成功の鍵:3つのポイント
協働ロボットの導入を成功させるための「鍵」として、現場から得た3つのエッセンスを共有しました。
- ベテランと未経験者の“分業体制”
溶接ロボットの運用では、「溶接技術」と「ロボット操作」の両方が求められますが、これらを一人で担うのはハードルが高くなりがちです。そこで提案したいのが、ベテラン職人と未経験のオペレーターによる分業体制です。
ベテランは品質の確認や溶接条件の判断を担当し、未経験者はロボットティーチングや日々の稼働を担当する。この役割分担により、稼働率が向上し、ロボットを使った溶接経験がその後の手溶接のスキル向上にも繋がるという好循環が生まれている事例がでてきています。
- 工程のシンプル化と段取り改善
ロボットも苦手なワークがあります。このワークの特徴は、個体差(ばらつき)があるものや複雑な形状のものが挙げられます。ここでご提案したいのが、工程を分割し、積極的に段取り替えを行う発想です。曲げ精度が安定しない箇所は、人が溶接を行い、その他をロボットが対応する工程設計がベターです。工程分割を行うことで難易度を下げることは、ロボットのティーチング時間などのセットアップ時間を短縮する効果があります。
また、複雑な形状の場合は、1回のクランプで全部を溶接するのではなく、複数回の段取り替えを行うことで、各工程の溶接内容を単純化すること、ティーチング時間が短縮され、溶接精度も安定します。これらの方法によりロボットの稼働率が向上した事例を多くあります。
- 省力化よりも“付加価値と人のやりがい”に注目
ロボット導入の目的を「省力化」だけに置くと、期待した効果が得られないケースを目にすることが多くあります。ロボットも生産財のひとつですので、生産性や品質の向上などの付加価値部分にも注目してください。同時に、このプロセスのなかに、作業者がやりがいを感じることも重要な要素です。導入事例動画のなかで、「ロボットをつかうことが楽しい!」とのコメントが多いことに感じた方も多いのではないでしょうか。ロボットの稼働があがれば、自ずと省力化になっていきます。
各社の導入事例でも、「若い人が楽しく金属加工を学べる環境を作りたい」「ロボットを通じて技術者として成長してほしい」といったコメントが見られました。ロボットはただの機械ではなく、これからの職人の技術を進化させる“パートナー”としての役割も担っています。
導入ステップとサポート体制
導入を検討している企業様に向けて、当社では神奈川県伊勢原市にある施設で、デモンストレーションやワーク試験を行っています。導入時は1日でセットアップから操作説明までを実施。遠方の場合は2日間のサポート体制も用意することができます。協働ロボット導入のご検討の際には、ぜひ弊社にご相談ください。
最後までお読みいただき誠にありがとうございます。CTWの販売をスタートした5年前は、熟練の溶接作業者の方がロボットの教示作業を行えばロボット化は成功すると考えていました。しかし、実際に成功されたお客様のロボット作業者は、ほとんどが溶接未経験の方でした。私の想像以上に楽しんでロボットを操作している姿に驚きました。私自身のロボットに対する考え方を、180度変化させた出来事です。ロボットを販売するだけでなく、導入後のイメージや成功事例のエッセンスをお伝えすることに注力するようになりました。ぜひ導入事例動画をご覧いただき、皆様と意見交換ができる日を楽しみにしております。
本セミナーの動画をご覧になりたい方はユニバーサルロボット社のWebサイトからお願いいたします。