ピンゲージとは

ピンゲージは、小さな穴径の精密計測や穴の心間距離の計測、他の計測機器の校正などに使用される棒状のゲージです。ものづくり現場での品質保証に欠かせない計測器具の一つです。今回はこのピンゲージの概要や種類、扱い方、管理について解説します。

ピンゲージとは引用元:新潟精機

ピンゲージとは

摩耗などに強い材料で作られ、厳しい公差内の所定寸法に精密に仕上げられた棒状のゲージです。ゲージの外径を呼び寸法とし、外径公差数千分台で作られています。また外径以外にも真円度や表面粗さ、ゲージ全長での外径ばらつきなども管理されています。このような高精度なゲージが多くの呼び寸法ごとに揃えられており、それらを使って精密な計測を行います。

ピンゲージの代表的な使い方は小さな穴の径を計測することです。穴径を精密に計測する器具にはインサイドマイクロメータやシリンダーゲージなど複数あります。しかしこれらは一定以上の大きさの穴でなければ測ることができません。ピンゲージはこれらの器具が使えない場面で強みがあります。例えば直径1mmを目標にあけた穴の径を測ることを考えてみましょう。この場合、少し小さいと思われる径、ここでは0.997mmの呼び寸法のピンゲージを穴に挿し入れます。穴径がこの寸法よりも大きい場合、ゲージは抵抗なく入ります。これを起点として順番に一つ大きな呼び寸法のピンゲージを挿し入れることを続けます。この結果、呼び寸法1.003mmのゲージで穴に入らなくなったとした場合、一つ前の1.002mmがこの穴径であるとわかります。

ピンゲージとは引用元:新潟精機

ピンゲージにはこの他にも、次のような使い方があります。

穴の心間距離の測定

穴の中心点はそのままでは実体のない点ですので、複数穴間の心間距離を測ることはできません。そこで、それぞれの穴にあうピンゲージを立て、ゲージを含む距離をマイクロメータなどで計測します。ピンゲージの外径はわかっていますから、計測値からそれぞれのピンゲージの半径を差し引けば、正確な心間距離を求めることができます。

穴の心間距離の測定引用元:新潟精機

ノギスの精度確認

ノギスは定期的な精度確認が必要ですが、ピンゲージを使って行うことができます。あらかじめ外径のわかっているピンゲージを計測することでノギスの指示値と比較しその精度を確かめることができます。

ノギスの精度確認引用元:新潟精機

歯車やスプラインのオーバーピン法

ピンゲージは歯車の品質管理にも用いられます。歯車の谷の部分にピンゲージを置き、上下で挟まれた距離を計測することで、歯厚などを精密に求めることができます。

ピンゲージに似た使い方をするもので、プラグゲージという道具があります。こちらは所定の寸法公差ぎりぎり合格・不合格の2つの外径を両端にもったゲージで、栓ゲージ、限界ゲージともよばれます。確認したい穴に両端を入れてみることで素早く合否判定ができるため、量産工程での品質管理などに使われています。

 

ピンゲージの種類(選定のポイント)

材質

鋼・超硬合金・セラミックスの3種類があります。鋼は一般的な用途で比較的安価です。超硬合金は非常に硬質で耐摩耗性に優れ、繰り返しの使用を経ても摩耗や傷がつきにくいです。また線膨張係数が小さいことから、温度影響も下げることができますが、最も高価です。セラミックスは耐摩耗性に優れるだけでなく、材質特性上錆びることがないため、手入れが簡単です。

形状

一般的なピンゲージはシンプルな棒状のストレート型とよばれるものです。しかし持ち手を付けたシャンク型もあります。ピンゲージは非常に微小な公差範囲を取り扱うため、手に持っただけでも温度が変化し寸法に影響が出ます。シャンク型は測定部を保護する形で樹脂の柄がついていますので、そこを持てば素手でも取り扱うことができます。また錆の発生防止に対しても有効です。

ピンゲージの扱い方

ピンゲージは次のような点に注意して取り扱います。

使用前
  • 表面についている防錆油やよごれなどをアセトンなどの溶剤で綺麗に拭き取ります。
  • 錆、傷、摩耗、変形が起きていないことを確認します。
使用時
  • 測定物とピンゲージが同じ温度になるまで、同じ場所に置いておきます。
  • ピンゲージへの温度影響を減らすため、手袋を着用して計測を行います。ピンバイスなどにピンゲージを装着して扱うことも有効です。

 

ピンゲージの管理方法

  • アセトンなどの溶剤で十分に清掃した後、防錆油を塗布し、所定の場所・ケースに戻します。
  • ピンゲージメーカによって、摩耗の程度を知る目安を設けている場合があります。それに照らし合わせ、継続使用できるかも確認します。

ピンゲージはシンプルながら他の器具では困難な計測を行う器具であり、正しく使用・保管をすることで、その製品品質を保つことが可能です。