ねじ加工の精度管理

ねじはタップやダイスなどの工具を用いて加工を行いますが、それぞれの出来ばえを評価するために、ねじゲージとよばれる検査器具が用いられます。ねじゲージは限界ゲージの一種で、雌ねじと雄ねじを評価するためにそれぞれ、プラグゲージとリングゲージという種類に分かれます。今回はねじ加工の精度管理に欠かせないねじゲージについて詳しく説明します。

ねじゲージ

ねじはその形状が規格によって厳密に決められており、それに従って雄ねじや雌ねじが製作されます。これらの製品が規格に合格しているか評価するものが、ねじゲージとよばれる検査器具です。ねじゲージは限界ゲージとよばれる種類の検査器具に当たります。限界ゲージは許容される最大と最小の寸法の間、すなわち公差範囲内に仕上げられているかを検査するもので、ひとつのねじを検査するために通り側と止まり側の二種類をセットで使用します。英語ではGoゲージ、No Goゲージとよばれます。

ねじゲージはプラグゲージとリングゲージという種類に分かれ、それぞれ雌ねじと雄ねじの評価に用いられます。

検査対象ゲージ種類最小値最大値
雄ねじリング止まり通り
雌ねじプラグ
ねじゲージ

引用元:OSG

プラグゲージ

プラグゲージは両端に雄ねじが切ってある棒状の器具で、それぞれが通り側と止まり側のねじになっており、雌ねじの評価を行います。通り側は規格による合格範囲のうち最小側を担当しており、無理な力を加えることなく手でねじこんだときに、通り過ぎればねじが小さすぎることはないと評価できます。止まり側は逆で、合格範囲のうち最大側を担当しており、これがすべて入らずに途中で止まれば、ねじが大きすぎることはないと評価できます。

ねじゲージ

引用元:OSG

リングゲージ

プラグゲージの逆で雄ねじの評価を行う器具になります。通り側と止まり側の二種類のゲージを使います。通り側は規格による合格範囲のうち最大側を担当しており、無理な力を加えることなく手でねじこんだときに、通り過ぎればねじが大きすぎることはないと評価できます。止まり側は逆で、合格範囲のうち最小側を担当しており、これがすべて入らずに途中で止まれば、ねじが小さすぎることはないと評価できます。

なお止まり側が入らないと判断する基準ですが、現行JISでは2回転を超えて入らなければ合格としています。

プラグゲージ

引用元:OSG

ねじの等級

ねじの規格による合格範囲に照らし合わせて判断をすると書きましたが、その範囲はねじの等級によって決められています。現行JISではISO方式にならって6H、8gといった記号で表されます。

一方で旧JISでは、1級、2級、3級といった等級が用いられていましたが、これまで長く使われてきたこともあり、現在でも検査が必要になることがあります。両者の公差範囲はおおよその対応は取れるものの、それぞれ独立したもので完全には一致しません。

また等級は必ずしもねじ精度の厳しさを表すものではなく、あくまで公差範囲を定めていることにも注意が必要です。例えば1級に合格するねじを作った場合でも、2級の基準では公差範囲から外れることから不合格となる場合もあります。等級はねじの大きさなどにより定められていますので、詳しくはねじゲージのカタログなどをご参照ください。

工作用と検査用ゲージ

ねじゲージに関する議論において工作用と検査用という区別を目にすることがあるかもしれません。これは止まり側のゲージについて旧JISで定められていたもので、工作用ゲージはWPとWR、検査用ゲージはIPとIRという略称で区別されます。前者は合格基準が規格よりも厳しめにできており、工作用ゲージで合格すれば検査用ゲージでは確実に合格できる、フロントローディングの考えによっていました。現行JISではISOにならって旧JIS検査用に近い、一種類に統一されています。

めっき厚みを考慮したゲージ(オーバーサイズタップに対応)

検査対象となる製品が後工程でめっきなどの表面処理を施される場合、処理による肉厚増加を見越して規格よりも大きめに加工を行うことがあります。この場合は検査もそれを考慮して実施する必要があります。表面処理によって生じる肉厚変化は様々ですので、状況にあわせて適切なゲージを選択します。肉厚によってはカタログ品からオーバサイズのゲージを選ぶことができますが、無い場合はゲージメーカーとの協議の上、特注することになります。

日常点検

最も基本的な機械要素であるねじですが、ゴミやサビの付着などでスムーズに動かなくなることを経験されたことがある方も多いと思います。ねじゲージも正常な状態で使用しなければ誤った判断につながりますので、日常的な点検は大変重要です。検査箇所に、やせや変形がないか、ゴミなどが付着していないか、サビが発生していないかなどを、始業時、シフト間、終業時といった決められたタイミングで検査、記録することが必要です。

また精度を維持するためにも、次項でご説明させて頂く校正を定期的に実施しなければなりません。

ねじゲージの校正

検査器具には定期的な校正が必要ですが、ねじゲージも例外ではありません。繰り返しの使用によってねじ山が摩耗し、規格から外れてしまうこともありますので定期的な校正が必要です。校正にはJISに定められた環境で特殊な装置を用いて行われる必要がありますので、ねじゲージの製造元に問い合わせてください。

まとめ

ねじは最も基本的な機械要素ですが、想定通りの締結には規格に沿って作られている必要があり、それを確認するためにねじゲージがあります。簡単な検査器具ではありますが、ねじの規格を管理する上で重要な役割を担っています。